" INTERSPACE " WORKS of MEET CULTURE in OSAKA 2024
Interspaceは日常や旅先の中で出会う、何気ない風景の中の美をテーマに制作された作品です。
写っている対象は、実は何ということのないものばかりです。地下鉄の汚れた窓越しの風景、飛行機内で読書をしている人、など。美しい表情を纏っているものだけが美しいのではなく、私は日常の中に見え隠れする一瞬の美しさに強く心が惹かれます。
絵を描くことが得意で、空想が好きだった子供の頃、実際の状況とは全く関係しない、もう一つの美しさが存在することを知っていました。
目覚めたとき目の前のシーツのシワが連なる銀嶺であること、天井の木目の中に0から9までの数字が隠れていること。すぐに消え去るそれらを絵に描き留めることはできませんでしたが、その頃の記憶がこれらの写真作品に繋がっています。
対象に対して観察者や記録者となるのではなく、子供の頃のように、皮膚感覚で、あるいは嗅覚で、聴覚で接することを心がけ、身を置いた現象の場と内の知覚が共鳴したとき訪れる、豊かな「もう一つの存在」をカメラにおさめているのです。
｢見るべきものは多く、美しいものは満ちあふれている｣
Universal perspective 普遍的な視点
私は極めて少ない構成要素でグラフィカルに成立する写真が美しいと考えています。合成等の加工を施さないオーソドックスなスナップ写真で、ミニマルな表現を達成させることが自身の方程式です。
私は30年以上プロダクトデザイナーとしてのキャリアがあり、無駄なものがないミニマルな状態が、物事を最もより良く伝えると確信しています。
「Less is More」“少ない方がより豊かである” これは20世紀近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエの言葉であり、私がクリエイティブに於いて最も共感できる言葉です。
Photo as a tableau タブローとしての写真
今回、MEET CULTURE in OSAKA 2024でご覧いただく写真は、ドイツを9度訪れた2001年から2011年の期間に撮った膨大な写真の中からセレクトした写真です。何百回も見直し、見続けていても飽きる事のないものを選んでいます。「写真は2度目のシャッターを切ることで完結する」これは１度目は感覚的でも2度目は意味を考えるべきことを表した言葉です。タブローとしての写真は、普遍性を持つ1枚であるべきだからこそ、熟考する時間を設けています。
インテリアに飾られることについて、例えば北欧のヴィンテージインテリアのフリッツ・ハンセンやカール・ハンセン& サンなど北欧を代表するインテリアブランドは世界中から支持されています。それらのデザインには “調和のとれた洗練” が内包されています。だからこそ幅広い層に、長きにわたり支持されているのでしょう。インテリアに飾られる写真もまた、空間の構成要素として同様の思想であるべきです。ずっと見続けられる写真は空間の中で、窓のように鏡のように存在し、時に対話する相手として傍にあるものなのです。
Drawings and Photos ドローイングと写真
「1/125 sec. ≒ 3 minutes」これは、私が写真を撮影するときのシャッタースピーの平均125分の1秒と、3分で描くクロッキーとが同等であることを表しています。写真はフィルム1本36枚の中で良いと思える写真が1枚か2枚あれば良い方です。クロッキーも同様に1度のセッションで描く30数枚の中から良い出来は1枚か2枚なのです。
目の前の対象をそのままフィルム、画用紙に定着させることは、その場の感覚的な所作であり、視神経と手が直結した時に起こるある種のフロー状態の時に成せることです。そういう意味において写真とドローイングは同等であり、両方の世界を行き来することは私にとって自然なクリエイション行為なのです。
